バイオメタルは、電流を流すと筋肉のように動く、細い繊維状のアクチュエータ(駆動装置)です。
生物のような柔らかで静かな動きをする金属製のアクチュエータということで、バイオメタル(BioMetal)という名前がつけられました。
通常は、柔らかくナイロンの糸のようにしなやかですが、電流を流すとピアノ線のように強靱になり、強い力で収縮します。
電流を止めると再び柔らかくなり、もとの長さに伸びます。
繰り返し何度でも動かすことができます。
バイオメタルは現在、細線状のバイオメタル・ファイバー、BMFシリーズとマイクロ・コイル状のバイオメタル・へリックス、BMXシリーズの二つの製品系列があります。
※回転型のモーターなどと区別して主に伸縮で使うアクチュエータを人工筋肉と呼んでいます。現在、人工筋肉というと化学系(高分子系)やゴム系(空気圧駆動)があります。
ビデオライブラリーでバイオメタルの応用例を動画でご覧ください。
●バイオメタル・ファイバー、BMFのバリエーション
BMFは自己伸縮性を持っています、髪の毛のように細くても大きな力で収縮します。 |
●バイオメタル・ヘリックス、BMXのバリエーション
BMXシリーズは、BMFシリーズに比べ発生力は小さいのですが、大きな動きを取り出すことができます。 |
バイオメタル(BioMetal:トキ・コーポレーション株式会社の登録商標)は、Ti-Ni系形状記憶合金を原料にした繊維状のアクチュエータです。
電流を流しニクロム線のように自己発熱させて動かす電気・熱駆動方式で優れた性能を発揮します。外見や成分は一般的な形状記憶合金とあまり変わりませんが中身や特性は異なり、繰り返し運動に安定な強い異方性を持った組織を持っています。一般的な素材としての形状記憶合金と性質が異なり、繊維自体が一つのメカニズムとなっています。
適切な条件で使用すれば、ソレノイド(電磁石)やギア付きモーターのような使い方ができるアクチュエータであり、形状記憶合金というよりも「形状記憶効果を利用した人工筋肉的なアクチュエータ」と考えた方がよいでしょう。
※異方性=運動方向によって異なる性質をみせる事。
バイオメタルは現在、「バイオメタル・ファイバー」と「バイオメタル・へリックス」の2種類が製品化されています。細線状態で伸び縮み方向に使うものが「バイオメタル・ファイバー(BMFシリーズ)」、マイクロコイル・スプリング状に加工したものが「バイオメタル・へリックス(BMXシリーズ)」です。
BMFの操作量(運動する長さ変化)はもとの長さの約5%前後と小さめですが、大きな力を取り出す事ができます。一方、BMXはBMFに比べて操作力は弱くなりますが、伸張した状態を基準にするとぼぼ50%の大きな操作量を取り出す事ができます。BMF、BMXともに線径が太いものほど大きな力を出せますが、通電電流も大きく、冷却時の反応が鈍くなります。反対に線径が細いものほど発生できる力は弱くなりますが、通電電流は少なく、応答速度も速くなります。
※応答速度=入力に対して出力が反応する速度のことで、ここでは、電流を流したり止めたりした時にバイオメタルが反応して動作する速さの事。
通電で加熱したときの応答性は、線径が違ってもほとんど変わりませんが、線形の細いものは、冷めやすいので、冷却時の応答速度が向上します。
また、バイオメタルのような人工筋肉型アクチュエータは往復で利用される事が多く、冷却速度で応答速度がほぼ決まります。ちなみに冷却速度は、同じ使用条件下であれば大まかにいって線径に反比例しますので、熱交換速度の速い線径の小さいものほど応答性が良くなります。
また、操作量は太さがちがってもほとんど同じです。BMFもBMXもアルファベットの後ろに付く数字は、線材の直径をμm(マイクロメートル、1000分の1ミリメートル)で表したものであり、BMF100は、直径約φ100μmのバイオメタル・ファイバーという意味です。BMX100は、直径約φ100μmのバイオメタル・ファイバーで作られたコイルバネです。BMXは、コイル径が線材径の約4倍です。
例えば、BMX100の直径は、約φ0.4mm、BMX150の直径は、約φ0.6mmです。
※操作量とはアクチュエータの動きの大きさのことです、操作力とはアクチュエータが発生できる力のことです。操作力と操作量は、ロボット工学や制御工学で使われる用語です。当社では、操作量と操作力のことを説明の都合で、それぞれ運動ひずみや発生力(実用負荷)ということもありますが、ほとんど同じ意味です。
ご注意:バイオメタルは以下の用途には向きません。他の方法をご検討ください。
■高速繰り返し動作が必要な用途(ただし収縮方向のみ高速動作が可能です。)
■大きな荷重負荷を動かす用途(モーターや空気圧向きの用途)
■高温での使用(BMF:60℃以上、BMX:50℃以上)
■水中特に酸性水溶液中での長期間の使用