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バイオメタルは、筋肉のように動く金属系の細い繊維状のアクチュエータ(駆動装置)です。通常は柔らかくナイロンの糸のようにしなやかですが、電流を流すとピアノ線のように強靱になり、強い力で収縮します。通電をやめると再び柔らかくなり、もとの長さに伸びます。繰り返し何度でも動かすことができます、温風などで加熱しても同様な効果が得られます。
主に伸縮で使うアクチュエータを普通のモーターなどと区別して人工筋肉と呼んでいます。現在、人工筋肉というとゴム系(空気圧駆動)や化学系(高分子系)があります。
バイオメタルは、形状記憶合金を原料にした金属系の人工筋肉です。生物のような柔らかで静かな動きをする金属のアクチュエータということで、バイオメタル(BioMetal)という名前がつけられました。
バイオメタルおよびBioMetalは、トキ・コーポレーション株式会社の登録商標です。製品形態として細線状のバイオメタル・ファイバー(BMFシリーズ)とマイクロ・コイル状のバイオメタル・へリックス(BMXシリーズ)があります。
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バイオメタルはムクの形状記憶合金の線材ではなく形状記憶合金を原料にした人工筋肉です、伸縮方向に異方性を持った一つのメカニズムになっています。異方性とは、方向によって素材の性質が異なることをいいます。木や布などは典型的な異方性材料です。生体もほとんど異方性材料でできています。
バイオメタル・ファイバー(BMF)は、伸び縮み運動を繰り返し取り出すアクチュエータ(駆動装置)として使いやすく優れた性質を発揮します。内部組織が伸縮方向の運動に適した状態にそろっているため、ナイロン糸のようにしなやかで寸法的に安定しています。また外から力を加えなくとも電流(加熱冷却)に対応して筋肉のように伸び縮みします。
バイオメタルへリックス(BMX)の場合は、製品仕様として収縮する力に比べ非常に小さな力で伸長するようになっています。応答性が高いのも特長です、また適切な条件で使用すれば安定した動作を長期間にわたって取り出せます。
一般的な形状記憶合金では、材料的に不安定な面もあり、大きな動作ひずみでの繰り返し動作に十分な寿命を持ったものは、ほとんどありません。大きな運動ひずみで使うと伸びたり、動きがわるくなって、無理に使用を続けると破断しやすくなります。このためスプリングなどに加工し、小さなひずみ範囲で使用せざるを得ないのです。大きな運動ひずみを利用する場合は、わずかな使用回数に制限されます。
一方バイオメタルは、材料的に安定であり、温度ヒステリシスが狭く、より早い応答性を持っています。また直線形状のものでは、適正な条件の下では、3~5%の運動ひずみ(全長に対する長さ変化)でも1000万回を越える繰り返し動作が可能です。バイオメタルは、形状記憶合金と同様に熱でも動きますが、電気抵抗が高いため、特に電流を流してニクロム線のように自己発熱させて動かす、電気・熱駆動方式で優れた性能を発揮します。耐久性や応答性においてもソレノイド(電磁石)や小型のギア付きモーターのような使い方ができる繊維状のアクチュエータなのです。
BMFとBMXとは何ですか?バイオメタルはどんな形で入手できますか?
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バイオメタルを細線の状態で、伸び縮み方向に使うことを前提としたものをバイオメタル・ファイバー(以後BMFと呼びます)といいます。細いコイル・スプリング状に加工したものがバイオメタル・へリックス(以後BMXと呼びます)です。
BMFの運動ひずみ(動きの大きさ、長さ変化)は、もとの長さの約4%前後と小さめですが大きな力を取り出せます。BMXは実用負荷(発生できる力)は弱くなりますが、収縮した状態を基準にしますと100%以上の大きな運動ひずみを取り出せます。BMF、BMX共に線径が太いものほど大きな力を出せますが、通電電流も大きく、冷却時の反応が鈍くなります。反対に線径が細いものほど発生できる力は弱くなりますが、通電電流は少なく、応答速度も速くなります。
応答速度とは、入力に対して出力が反応する速度のことで、ここでは電流を流したり切ったりした時に、バイオメタルがそれに反応して動作する速さのことです。線径の小さなものは冷めやすいので、冷却時の応答速度が向上します、運動ひずみは太さがちがってもほとんど同じです。BMFもBMXもアルファベットの後ろに付く数字は、線材の直径をμm(マイクロメートル、ミクロン)で表したものです。BMF100は、直径約100μmのバイオメタル・ファイバーという意味です。
BMX100は、直径約100μmのバイオメタル線材で作られたコイルバネです。現在のBMXシリーズは、コイル径が線材径の約4倍です。
BMXはどんな種類がありますか?。BMX150以外にもバイオメタルへリックスはあるのでしょうか?
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標準品としてBMX150の他にBMX50、BMX75、BMX100があります。BMXの後に続く数字は、線材径をミクロン単位で示したものです、その後の数字で長さを表すことがあります。
例:BMX15020(150ミクロン、長さ20mm)
コイル径と線材径の比はいずれも4:1前後です、詳しくは、BMXのページをご覧ください。
※標準品以外の線径、コイル径の特注には対応していません。
※セット以外の長さ、組合せでの販売も可能です、「お問合せフォーム」よりお尋ね下さい。
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運動ひずみは、通電と通電停止に対応したバイオメタルの長さ変化のことです、アクチュエータとして使う場合の操作量やストロークです。負荷はバイオメタルが外部に対して発生できる力の大きさと考えてください。
負荷(力)や運動ひずみは動作寿命と深く関係します、バイオメタルは、大きな力を発生したり、大きな運動ひずみの範囲で動くことができますが、ある範囲を超えると、内部の精密に組織化された構造を壊してしまい、繰り返し運動させていると徐々に性能が変化して最終的には破壊に至ります。
反対に適正な負荷や運動ひずみの範囲なら繰り返し運動させても、バイオメタルの内部は、ちょうど関節を持った機械的なリンクのように、構造的に非常に安定な状態が保たれ、動きや性能に対する変化がほとんどありません。この適正な負荷の範囲を実用負荷、運動ひずみの大きさを実用運動ひずみといっています。
実用運動ひずみや実用運動負荷の範囲で使えば、10万回以上の動作が可能です。さらに条件次第では、数億回の運動も可能です。BMFについては、実用使用領域として簡単な図が公開されています。
参考:BMFの実用使用領域
10年以上前にバイオメタルを購入しましたが、現在のものと性能や仕様がだいぶ異なるようです。
どのような違いがあるのですか?
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バイオメタル(BMF)が初めてアクチュエータとして発売されたのは、1985年ごろです。発売当時のもと比べ現在のバイオメタルは格段に進化しました、特に2000年から発売されたものから大きく変わりました。
現在のバイオメタルは発売当初のものと比べ、実用負荷(動作寿命を考慮して実際に使える発生力)は二倍以上、同じ太さなら応答速度も二倍以上、運動ひずみも二倍近くに向上し、適正な負荷のもとでは繰り返し動作にともなう寸法変化がほとんどなくなりました。電気抵抗も1.5倍近く大きくなり、小さな電流でも加熱が容易になりました。エンジンでいえば同じ大きさと燃費でも馬力が五倍になって、耐久性も格段に増したことになります。
自励発振機やチョウチョロボットの動画資料(ビデオライブラリー )でその違いを確かめることができます。以前のバイオメタルは、特性的には原料の形状記憶合金に近く、使いにくい面も多かったのは事実です。したがって、性能的に不十分でうまく応用できなかった用途でも、現在のバイオメタルを使えばうまくいく可能性が十分でてきました。
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動作寿命は、バイオメタルをアクチュエータとして利用できる動作回数と思ってください。伸びなどの永久変形と運動ひずみの減少などの性能変化、それに破断という三つの要素が考えられます。また動作寿命は負荷荷重や運動ひずみの大きさ、および過熱状態と関係します。適切な負荷と運動ひずみの範囲では、A往復動作で3億回以上の実績があります、更にこの範囲では過熱状態になることもありません。
例えば、BMF100で80gfの負荷、2.5%の運動ひずみで3.4億回の動作試験が完了しており、現在も試験進行中です。
運動ひずみを限界まで利用し続けると、適正な負荷状態でも過熱を繰り返すことになり動作寿命を縮めることがあります。収縮が完了する前に電流を切ることがバイオメタルの使い方の基本です。BMFの最大運動ひずみは、6%に達することもありますが、繰り返し使用する用途では適切な範囲でご利用ください。
ただし動作回数を少なく設定できる場合は、運動ひずみをフルに利用することができます。
例:10万回以下の繰り返し動作を想定した、当社製マイクロ・ロボット、サイレントアームSA-01では、BMF100で約5.0%の運動ひずみを最大120MPaの応力で利用して10万回の動作寿命を得ています。
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応答速度(応答性)とは入力に対して出力が反応する速度のことで、ここでは電流を流したり切ったりした時に、バイオメタルがそれに反応して動作する速さのことです。大きな電流で通電加熱を行うと変態速度まで高めることができます。バイオメタルの変態速度は非常に高く、特にBMFは無負荷状態(重りなどの外力の影響がない状態)では、msec(ミリ秒)以下でフルストロークの収縮動作が可能です。
収縮速度を上げるために電圧を上げる場合は、ご注意ください。過電流によって赤熱・発火する場合もあります。弛緩伸長する速度は冷却速度に対応します、しかし通常は自然放冷をするため空気中の冷却速度が伸長速度になります。常温大気中での放熱に頼る場合は3Hz程度とお考えください。強制空冷や液冷をすれば、ある程度冷却速度を高めることができます。ただしBMの熱伝導性が比較的低いこともあり、早く冷やすためにヒートシンクを付けたり水中で動作させても思ったほど冷却されないことがあります。熱伝導率はステンレスの1/8、銅の1/180程度しかありません。
また線径の小さなものは冷めやすいので、冷却時の応答速度が向上します。
加熱冷却のどちらのプロセスも、BMの制御方法と、組込まれる機構設計によって大きな影響を受けます。特に早い応答速度が必要な場合は実際に回路を作成して検証して下さい。場合によっては他の形式のアクチュエータの方が適している場合もあります。
収縮については高速に動作するようですが、どのくらいの速さですか?
また、電流を止めて元に戻るとき、どのくらいの時間が必要ですか?
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バイオメタルを直接駆動するのは熱エネルギーです。バイオメタルが電流で動くときは、電流でバイオメタル内にジュール熱が発生し、その熱で動きます。電流を大きくすれば速く動かすことが可能ですが過熱には注意してください。
一方、電流を止めて元に戻る場合は、バイオメタルが冷えて元に戻りますので、バイオメタルの冷却速度で運動速度が決まります。無風時の同じ条件なら細いバイオメタルほど速く戻ります。
BMX150の場合、30gの重りをつるした状態でもとの長さの200%近いフルストロークを動かした場合、5秒ほどかかります。BMF100を全長の3%の長さ変化をするような状態で加熱冷却を繰り返すと、1秒間に3回の往復運動ができます。ストロークをさらに小さくすれば、さらに速く動かすことも可能です。重りを大きくして速くすることも可能ですが、寿命が短くなります。
バイオメタルは、わずかな温度差で大きく動作することが可能です。一般的な形状記憶合金の線材と比較し、同じ太さなら格段に高速な往復動作が可能ですが、電磁アクチュエータや圧電アクチュエータのような高速運動は出来ません。
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繰り返し使用することがなければ、500Mpa位の応力は簡単に出せます、これは直径φ0.1mmのBMF100では400gfくらいの力です。強く引っ張った状態で拘束し、急速に加熱するともっと大きな形状回復力を出すことができますが、バイオメタルを痛めてしまいます。
収縮力が材料の強度よりも強いのです、この点は使用上特に注意を必要とする点です。
バイオメタルのアクチュエータとして許容できる最大発生力は、動作寿命とのバランスから決められています。
参考:BMFの実用使用領域
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測定では、6.1(マルテンサイト低温相) 〜 8(オーステナイト高温相) cal/mol℃です、原料のTi-Ni系の形状記憶合金に近い値です。
マルテンサイト状態とオーステナイト状態で比熱は違います。また動作中は、機械エネルギーに変換される熱量(潜熱)があるため、見かけの比熱は、加熱中と冷却中ともに大きく変化します。負荷の大きさや回復ひずみ、回復速度などにも影響されます。
特に当社のバイオメタルは熱-機械エネルギーの変換効率が高いため、一般的な形状記憶合金に比べこの部分の潜熱が大きく、上記条件の違いで大きく変化する傾向があります。一般に物性学などでは、このような不安定領域は現象が複雑なため比熱を定義していないようです。公開されている形状記憶合金の比熱といわれるものは、変態に関わらない温度区間の比熱を示すことが多いようです。
※cal/gに換算した数値は公開しておりません。
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バイオメタルの原料であるTi-Ni系の形状記憶合金は、金属としては電気抵抗が高く熱伝導もわるい材料です。この素材は金属間化合物といわれる物質で金属であるにもかかわらず、共有結合性を持ち、自由電子の移動が少ないことに関係しています。
Ti-Ni系の形状記憶合金は、写真のように細線を手で持ったままその近傍を赤熱しても熱くありません。同じ太さの銅線や鉄線などと比べると熱が伝わりにくいのがよくわかります。
熱伝導率は熱伝達率はアルミニウムの約1/18、銅の約1/28程度しかありません、早く冷やすためにヒートシンクを付けたり水中で動作させても思ったほど冷却されないのはこのためです。また電気抵抗は銅の50倍以上もあるので、わずかな電流を流すだけでニクロム線のように簡単に加熱することができます。
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ヤング率(縦弾性定数)は、応力とひずみが直線的な対応関係を定常的に示す弾性域内で有効な常数です。一般の金属の弾性域は、実際のところ全長の0.1%以下の非常に小さなひずみ(長さ変化)範囲の話になります。
バイオメタルは、この弾性変形と異なったメカニズムで変形し、長さ変化は、その数十倍以上の大きさです。したがってこの範囲のヤング率を議論することはできません、バイオメタルのヤング率は不定です、動作中に変化します。
非通電状態では、ほとんど力を入れなくてもしなってしまうので0に近い値になりますし、十分加通電された状態では、原料であるTi-Ni系形状記憶合金と同じ鉄の約半分ほどの剛性を持つことになります。
通電しない状態でも無理に長さ方向に引っ張ってヤング率を測定するとやはり、鉄の半分ほどの値になります。
バイオメタルはアクチュエータでありムクの材料ではありません、その意味でヤング率を議論する意義は少ないと思います。
バイオメタル自体の耐熱温度はどの程度と考えられますか?
誤って過熱した時、すぐ加熱を止めた場合、どの程度の温度で、どの程度の時間の加熱であればバイオメタルとしての再生が可能なのでしょうか?
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バイオメタルは、負荷荷重が適正な範囲内であれば、200℃くらいまで過熱しても大きな性能の変化はありません。ただし動きを拘束したり、強い外力を加えた状態では、伸びたり破断したりする恐れがあります。また繰り返し、常にこのような温度まで過熱される使い方はさけてください。長さなどや運動ひずみが変化し、動作寿命が著しく低下していきます、数千~数万回で破断することもあります。
200℃の温度は、バイオメタルの表面にCRC556などのスプレー式機械油を塗った状態で、白煙が上がり始める位の温度を目安にすると良いでしょう。
同様な条件で1~2回程度で1秒以下の短時間であれば、うっすら赤くなるくらい(400℃以上)に過熱しても動作は大きく変化しませんが、永久伸びが発生します。このため長さの再調整が必要になります、BMXではこのような伸びが大きいのでご注意ください。当然、過熱されていない普通のバイメタルと比べて動作性能は劣化します。
過負荷がかかった状態ですと、この伸びは大きなものになり、伸びも大きく、直ぐ破断することもあります。過熱状態を長時間続けたり、繰り返すとバイオメタルの性能は急激に損なわれ、最終的には普通の形状記憶合金に戻ってしまいます。10万回以上の動作を期待するのであれば、適正な負荷加重と適正な運動ひずみの範囲内で、完全に形状回復が停止する前に加熱を止めるのが使い方の基本です。
BMFの場合運動ひずみで4.5%以上の収縮はさせない方がいいでしょう。
BMFをプーリーやフックにかけるためにループ状に癖をつけるときは、加熱したハンダごての先などにひっかけて引っ張りますが、このとき癖をつける箇所は、300℃位になっています。大きな運動をさせる箇所でなければ、この程度の過熱を行っても問題ありません。
環境温度で、どの程度の温度であればバイオメタルの記憶効果を壊さずに維持できますか?
この場合どの程度の時間その雰囲気に放置できますか?(保存温度)
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プラスチック部品などの耐熱温度内(100℃)なら問題ありません。バイオメタル自体は負荷荷重が適正な範囲内であれば、200℃くらいまでの環境温度でも大きな性能の変化はありません。
適正荷重はカタログを参照してください、ただし動きを拘束したり強い外力を加えた状態では、伸びたり破断したりする恐れがあります。
プラスチック製のアクチュエータデバイスなどを、70℃以上の温度と室温(20℃)の間を頻繁に行き来させると、動作性能は低下することがあります。バイオメタルがプラスチック部品に触れるような所で収縮が起きて食い込むことが原因です。
BMFはさびますか。また油や水に対してどのような反応をするでしょうか?
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バイオメタルのようなTi-Ni系の形状記憶合金の耐食性はステンレス以上と考えられます、さびや油には強い方です。
しかし意外な弱点があります、Ti合金は、一般的に水素脆化といわれる現象があります。これは、小さなH+(水素イオン)が合金内部に侵入し、さびなくても材料をもろくする現象です。形状記憶合金やバイオメタルも例外ではありません、水中特に酸性の水溶液中は水素イオンが多数存在します。
細線を長期間水中で使うような用途にはお勧めできません。強酸に触れたバイオメタルはよく水洗いした後、100℃以上に加熱乾燥して水素イオンを追い出してください。またバイオメタルは他の多くの金属と同様、塩化第二鉄の溶液で腐食します。鉄の錆にも弱いのです、バイオメタルが直接触れる部分はさびやすい鉄は避けた方がいいでしょう。
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特にBMXの場合はその形状によって、また、加熱状態にあるバイオメタルは収縮力を伴って変形するため、コイルスプリング(引きばね)のように考えられがちです。しかし、バイオメタルの動作原理は、リニア・アクチュエータとしてのものであり、ばね定数や初張力といった考え方を当てはめる事は適当ではありません。
ばねの場合は、引き伸ばすための力と元に戻ろうとする力は常に釣り合っています。
バイオメタルの場合、冷えた状態のバイオメタルを伸ばすために必要な力は、加熱時にバイオメタルが発生する力に比べて非常に少なくて済みます、この差分が外部に対して仕事をする力(発生力)になります。また、冷えた状態で伸ばされたバイオメタルは、力を取り除いても(除荷しても)そのままの位置を保ちます。これらが低温時のバイオメタルとばねとの大きな違いです。
加熱時にバイオメタルが収縮しようとする力は、ばねのようにコイルを引き伸そうとする力(負荷)に対応して発生するのではなく、バイオメタルの結晶配列が変形する事で発生します。この力はバイオメタルの素材強度よりも強く、さらに結晶配列の変形限界を超えても働き続けます。このため、加熱状態にあるバイオメタルに実用発生力を超えた負荷をかけると、自分自身の内部構造を破壊してしまいます。
バイオメタルの実用発生力は、バイオメタルの結晶配列を壊さずに繰返し動作が可能な負荷の上限によって制限されます。上限は素材強度に依存しており、ほぼ一定と見なすことが出来ます。この範囲内で、期待する動作寿命によって決定する必要があります。これが高温時のバイオメタルとばねとの違いです。
バイオメタルの動作限界や発生力を考える際には、ばねとしてではなく、リニア・アクチュエータとして捉える視点を持つ事が有効です。これはBMXのみならずBMFについても同様です。
A18もご参照下さい。
バイオメタルの動作限界や発生力については、リニア・アクチュエータとして考えられるとの事ですが、どのようなものですか?
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バイオメタルは、冷えて負荷によって伸ばされた状態(初期ひずみ)を動作開始点とし、加熱されることで縮んだ状態(動作ひずみ)に向かって変形します。これが、アクチュエータとしてのバイオメタルのストローク範囲(運動ひずみ)になります。また、変形に伴う変形力を利用して、負荷を動かすという仕事ができます。ストロークと負荷荷重の大きさは、アクチュエータ寿命と密接な関係があります。
《負荷荷重について》
バイオメタルの持つ変形力は、全てを負荷を動かす力として使える訳ではありません。加熱時のバイオメタルは、アクチュエータがある力で収縮方向に動こうとしている状態と捉えることができます。この時の変形力は非常に強く、バイオメタル自身の素材強度を上回ります。このため、変形力に逆らって収縮を妨げるような負荷をかけると、BM内部の結晶構造が破壊されてしまい、永久伸び変形となって現れます。
例えば、ロックされた歯車を回すために強力なモーターをつないだ結果、歯車自身を破損してしまうような状態とお考え下さい。これらのことから、バイオメタルの内部組織を壊さずに、繰返し動作することが可能な負荷の上限を当社では「実用発生力(推奨荷重)」としております。これは変形力自体の大きさに関わらずほぼ一定です。
負荷の大きさは、この上限内で、期待する繰り返し動作寿命に応じて決定される必要があります。
《ストロークについて》
バイオメタル内部の構造は、微細な結晶粒が方向を揃えて並んでいる状態(等方等粒性)と考える事ができます。加熱時にはこれらの結晶粒が伸長方向から収縮方向へ一斉に変形し、冷却時には逆向きに変形します。これにより機能異方性と長大なストロークを実現しています。このストロークの限界は個々の結晶粒の変形力、結晶粒相互の配列、負荷の大きさによって決まり、これは素材の性質や処理によって決まってしまいます。
ここで、結晶粒相互の配列が収縮限界に達した後にさらに加熱を続けると、結晶粒自身は変形を続けようとしますが、それにより相互の配列や結晶構造を崩してしまい、これは永久伸び変形として現れます。負荷が大きい場合には、この限界はさらに早く現れます。この事から、バイオメタルを繰り返し動作するアクチュエータとして用いる場合には、ストロークの限界に達する前に加熱をやめる必要があり、負荷の大きさや期待する動作寿命によってはさらに制限する必要があります。この限界を当社では「実用運動ひずみ」としております。
アクチュエータ・デバイスの設計時には、これらの「実用発生力」「実用運動ひずみ」の範囲内に収まるようにすることで、良好な製品寿命を得ることができます。
参考:BMFの実用使用領域
バイオメタルについての、詳しいデータが欲しいのですが?
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当社からお客様に提供できるデータは、すべて当社HPと製品に付属の説明書にて掲載しております。これ以外のデータについては、お問合せ頂いてもお回答いたしかねます、ご了承下さい。
また、提供しているデータは、実用的なアクチュエータ・デバイス設計に必要と思われるもののみになります。
バイオメタル自体を研究するなどのためのデータ請求については、お断りさせていただいております。
《ご提供をお断りしているデータの例》
・温度とひずみのグラフ:参考値のみ提供しております。
温度とひずみ量には多少のヒステリシスがあります。また負荷によっても変動します。C15もご参照下さい。
参照:BMFのカタログ(PDF:624KB)
・温度と発生力のグラフ:提供しておりません。
「実用発生力」はバイオメタルの内部組織を壊さずに繰返し動作が可能な、負荷の上限になります。これは素材構造の強度に依存しており、温度に関わらずほぼ一定と見なすことが出来ます。
バイオメタルの変形力は非常に強く、過負荷状態で動かそうとすると、自分自身を壊してしまいます。このためアクチュエータ・デバイス設計においては、バイオメタルの変形力そのものを議論する意義は少ないと思われます。
実用発生力とストロークはアクチュエータの寿命に密接な関係があります。当社ではBMFの場合、線材断面積に対して80MPaを上限として推奨しています。
A05、A07、C07もご参照下さい。
・温度と電気抵抗値のグラフ:提供しておりません。
温度と電気抵抗値は、比例関係にはありません。
・応答速度、収縮・伸長速度:提供しておりません。
負荷、機構設計、環境温度、加熱方法、放熱の仕方などによって大きく影響を受けます。
A09、C20もご参照下さい。
・BMXのばね定数や初張力:定義できません。
ばね定数や初張力といった考え方を当てはめる事自体が適当ではありません。BMXの形状はコイル状ですが、いわゆるコイルスプリングとしてその性質を捉える事はできません。バイオメタルの動作や発生力を考える際には、リニア・アクチュエータとしてお考えいただき、「最大動作ひずみ」「最大実用発生力」の範囲内でお使い下さい。
これはBMXのみならずBMFについても同様です。A17、A18もご参照下さい。
・バイオメタルの成分、構造、製造方法等:公開可能な情報は、ホームページに掲載しております。これ以外のデータは提供しておりません。
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結論を言えば、大きなものより小さなものに向いています。以下のような理由によります、同じ機械でも寸法(長さ)をかえると面積は寸法の二乗に比例し、重さや体積は三乗に比例して変化します。モーターなどの電磁アクチュエータの力は寸法の三乗に比例した力ですが、バイオメタルの発生力は寸法の二乗に比例した力(面積力)です。
今、同じ力を発生する同じ大きさのモーターで動くアクチュエータとバイオメタルで動くアクチュエータがあるとします。この機械をそれぞれ全長が2倍の大きさに拡大した場合を考えると、モーターで動く機械は、8倍(2の三乗倍)の力が出せるようになりますが、バイオメタルの機械は、4倍(2の二乗倍)の力しか出せません。
一方、機械の重量は8倍(2の三乗倍)になりますから重さあたりの力で比べると、バイオメタルの方が半分の力しか出せずに不利になってしまいます。しかし反対に機械のそれぞれ大きさを半分にした場合、今度はバイオメタルの力の方が二倍強くなり有利になります。
発生力以外でも応答速度や強度など多くの性質についてバイオメタルを使った機械とモーターなどを使った機械を比べると、バイオメタルは小さな機械に向いていることが分かります。さらに摩擦力(寸法の2乗に比例)や慣性力(寸法の4乗に比例)など外的な要因を考えると、ますますマイクロマシン向きのアクチュエータであることは明らかです。ということで小さな機械に応用するとバイオメタルは、その真価を発揮できます。
もう一つバイオメタルは、動き出しから大きな力を出せることも大きな特長です。例えば、機械の部品を動かしたい時それが止まっているときは、摩擦(静止摩擦)が強いのが普通で、動き出すと摩擦は小さくなります(動摩擦)。このようなときソレノイド(電磁石)などを使うと、動き出しで一番発生力が弱いため、大きなソレノイドが必要です。しかしバイオメタルを使えば動き出しから強い力を発生できるので、小さく軽いアクチュエータにすることができます。構造が簡単になりますから、小さなメカニズムの低コスト化を考えた応用にも向いています。
バイオメタルに適さない応用はどのようなものですか?
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大きなものを動かす用途や高速で繰り返し運動を行うような用途などには向いていません。大きなものが苦手な理由は前の質問をお読みください、高速運動に適さない理由は以下のような理由です。
バイオメタルの運動は基本的に熱によるものです、素材が加熱冷却されることに対応して運動が起こります。電流を流すとバイオメタル自体の電気抵抗で熱が発生するため運動が生じます。熱に対応した運動は早いのですが、実際は熱の交換速度が遅いため、高速の繰り返し往復運動が苦手です。
バイオメタルは万能のアクチュエータではありません、モーターやソレノイド(電磁石)が、苦手な分野で力を発揮します。
バイオメタルは現在どのようなものに使われていますか。実例を教えてください。
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これまで製品化された実例ではロックの解除装置が多いようです、例えばホテル旅館用冷蔵庫型自販機の小ドアの開錠やセキュリティー関連機器の開錠装置などです。バイオメタルは動き出しでも大きな力を発生し、場所をとらず静粛で、低電圧小電流駆動が可能な特長などは、このような開錠装置の応用に向いているものと考えられます。その他バイオメタルをアクチュエータにした超小型空気弁は、精密な血圧計の減圧弁に利用された実績があります。これらは当社ホームページのビデオライブラリーで公開されています、ご覧ください。
バイオメタルが現在のような性能を持った形で販売されるようになったのは最近のことです。したがって、まだ応用品は少ないのが正直なところです。普及していないという意味では製品化のチャンスは大きいと思います、うまく応用した製品ができれば過去に例がないわけですから実績を検証しにくいというリスクもありますが、ヒットにつながる可能性も高いというわけです。ある意味では、すべてのお客様がバイオメタルについて素人です。
当社では、お客様が応用品を考えられる際には、作動不良が起きにくいものや起きても重大な問題になりにくい応用から始めて、徐々にステップアップしていく方法をお勧めしています。
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これまで製品化された実例では、圧倒的にBMFが多いようです。BMXは変形量が大きいため、初めてバイオメタルに接する方は扱いやすく感じますが、BMFの方が開発の歴史が古いせいもあり、アクチュエータとしての耐久性や信頼性、性能、完成度などの点で優れています。
また細線の引っ張りで使用すると変形がまんべんなく起こりますので、無駄なく動かすことができますので、コストやエネルギー効率を追求した場合なども有利になります。
ちょっとした実験や信頼性がそれほど必要ない用途にはBMX、それ以外はBMFを機構的に工夫して使う方がうまくいくようです。
BMFは、運動ひずみが小さくて、うまく使えないのですが。
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BMFは小さな運動ひずみでも発生力が大きいですから、ちょっとした工夫で大きな動きを取り出せます。以下の運動ひずみ増幅法を参考にしてください
◆テコを使った増幅法
BMFは、力が強いのでテコを使って動きを簡単に増幅できます。力や動きの比率は、テコの法則に従います。BMFが短いときは、固定部の曲げ変形に注意してください。
◆プーリーを使った増幅法
BMFの長さをとれば、大きな動きを取り出せます。プーリーはそのために有効な手段ですが、プーリーの回転抵抗やBMF曲げ変形の大きさに注意する必要があります。プーリーの溝径は、BMFの直径の20倍以上、理想的には、40倍以上にします。
◆Vの字型で運動ひずみの増幅
一番簡単な増幅法です。BMFが収縮し、角度が浅くなるとBMFの負荷が急増しますので注意してください。
◆シリコンゴムチューブを使った増幅法
柔らかなシリコンゴムの本体断面の中心からオフセットした位置にBMFを埋め込み、長さが変化しにくい導線などを断面の中心に配置すると、BMFの収縮運動を棒状の本体の曲げ動作に変換することができます。軟体動物のような動きをします。
バイオメタルを使ったアクチュエータの設計の簡単なコツはないでしょうか?
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回答を非表示にする... 》
ビデオライブラリーのページを参考にしてください。
オリジナルの機構的アイデアは、創造力の問題です。身の周りのメカニズムを観察しているといいヒントになることがよくあります。バイオメタルは筋肉的なアクチュエータですから生体機構もいいヒントになります。
機構のアイデアができたなら、次は使用するバイオメタルの検討を行います。BMFの場合は使用状態が実用使用領域にはいっていれば、機構的にはほぼ間違いなく動くでしょう。過負荷と過熱をさけ適正な運動ひずみの範囲で使用すれば、驚くほど長く信頼性のある動きを示します。
縮みを途中で止めておくということができるのでしょうか?
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回答を非表示にする... 》
長時間途中で止めるには、基本的に何らかのフィードバックが必要です。
電流の調整だけでは、放熱状況や荷重の変化で変化し不安定になります。ただし動ききった位置で保持するには、室温で標準電流かそれを少し下回る(75%)くらいの電流を加えていれば保持は出来ます。
標準電流は加熱駆動時の目安であり、過熱状態にならなければ、バイオメタルには問題ありません。大きな電流を流しても短時間なら過熱しません、過熱かどうかの判断は形状回復動作が完了したかどうかで判断します。要は過熱状態にならないようにすればいいわけです。
バイオメタルをうまく使うコツは、
・過熱しない
・過負荷を加えない
・完全に収縮させない
です。
これらを防止するヒントは、 下図、バイオメタル・アクチュエータ実用化の周辺技術 (過負荷過電流防止機構)をご覧ください。
加熱する際の応答性は電流を大きくすると早くなります、最大値は全ストロークがミリ秒以下で動きます、これは太さに大きな関係ありません。冷却時は大まかにいって応答速度は太さに反比例しますが、荷重やロット、周囲の状況で変わるため、細かいデータは公開していません。
バイオメタルはソレノイドなどと動きがだいぶ違います、実際にBMFを使って実験されることをお勧めします。
A08もご参照下さい。
参考:バイオメタル・アクチュエータ実用化の周辺技術 (過負荷過電流防止機構)
バイオメタルの伸張・収縮量を制御するためにサーボ系を組む場合、注意すべきことはありますか?
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基本的には、バイオメタルは、熱で動くアクチュエータですので、高速な応答(往復方向)を求めることはできません。
位置保持には電流が必要ですが、バイアスバネで予圧してバイオメタルの発生力と釣り合わせる方式が応答性も良く作りやすいと思います。BMF100、BMF75、BMF50を使えば、ギヤドモータに近い速度のものは作れます。
サーボ系を組む場合過熱に注意してください、モーターの駆動回路と同様なドライバーを使った場合、外部から強く拘束された場合など操作部が動かなくなることがありますが、このときも操作力を発生させるためバイオメタルに電流が流れ続けることがあります。決められた操作力の範囲で動く条件では必要ありませんが、外部から拘束されたり、強い力を受ける可能性があるときは、それを逃がす工夫が必要です。
過負荷過電流防止法については、 中立安定型アクチュエータ(Self Neutral Actuator)を参考にしてください。
参考: 中立安定型アクチュエータ(Self Neutral Actuator)
バイオメタルを2本拮抗構造とし, 往復運動の応答速度を上げることは可能ですか?
あるいはバネで伸張方向に与圧をかけておくなど、推奨される使用法ではないと思いますが、どの程度の範囲ならば問題ありませんか?
使用法の注意に書いてある「無理な力」とは「引っ張り強度」とはまた別ですか?
《
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単純に対向させる形は、一方が冷却されないうちにもう一方を加熱する状態になりやすく、応答速度が反対にわるくなります。また無理な力で引っ張り合うため、バイオメタルを傷めやすくなります。
これを防止しつつ、応答性を高めるには、中立安定型アクチュエータ(Self Neutral Actuator)を参考にしてください。またB10も参考にしてください。
引っ張り強度は単なる素材の機械的強度で破断の限界値です。無理な力とは、繰り返し利用できる実用発生力です。動作寿命にもよりますが、応力で80〜100MPa程度を基準にしています。
バイオメタルアクチュエータは、スプリングと組み合わせたものが多いですね。左右対称にバイオメタルを取り付けて、どちらの方向もバイオメタルで動くアクチュエータを作ることはできませんか?
もしできるなら設計の参考になる例は示してください。
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図のように一対のバイオメタルを対向した位置に置き、一方のバイオメタルが加熱され、もう一方が冷却さることによって左右対称の運動を得るアクチュエータを差動型といいます。このアクチュエータで動きの方向を切り替える時、これまで加熱されていた方が十分冷却されないうちに、他方を加熱すると、バイオメタル同士が引っ張り合って動かなくなります。
バイオメタルの発生力は、低温状態で大きなひずみを与えた場合素材の強度より大きくなることもあり、最悪の場合は、双方のバイオメタルにダメージを与え、アクチュエータが壊れてしまうことがあります。このような状況を防ぐため、加熱温度を必要最小限にし、動作方向を切り替える際は、これまで加熱されていた側のバイオメタルが十分に冷却されるのを待って、もう一方を加熱するようにしなければいけません。しかしこういった方法では、応答性が悪くなるばかりではなく、制御回路も複雑になります。
一方、普通材料のスプリングとバイオメタルを組み合わせた単安定型アクチュエータ(Monostable Actuator)は、バイオメタルを加熱あるいは冷却することによって、運動を得るアクチュエータです。このアクチュエータでは、スプリングを弱くしておけば、操作部を外部から拘束しない限り、加熱によってバイオメタルに無理な力が加わることがありませんが、動作の安定点は、常に普通材料のスプリングに引かれている側にあり、左右対称の運動が得られません。
中立安定型アクチュエータ(Self Neutral Actuator)は、バイオメタル同士が無理な引張り合いをすることなく、右動作状態から左動作あるいは左動作状態から右動作の切替時の冷却時間を特に考えなくとも利用でき、動作切り返しの応答性を向上させることができる改良型の差動型アクチュエータの例です。スプリングが外力を緩衝する働きをするためBMFに直接過負荷がかかることがありません。このスプリングは、中立位置の安定と過電流防止用のスイッチを作動させる機能も兼ねます。
バイオメタルの端部はどのように固定すればよいでしょうか?
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ネジとワッシャーによる固定法や圧着端子やスリーブをつかった固定法などがあります。スリーブは基板にハンダ付けすることができます、専用の圧着端子もいくつか用意しておりますのでご利用ください。
圧着端子を取り付ける際は以下のことに注意してください。
カシメ部の締め付け部分や先端形状が鋭すぎると切れやすくなります。バイオメタルは柔らかそうに見えても、定められた範囲以上に大きな変形や力を与えた場合もろい材料としての性質が出てきます。端子部には、できるだけ急激な変形(応力集中が起こる。)が加わらないようにします。
基本的には固い材料ですから、黄銅や銅、リン青銅などの柔らかな金属で挟んだり、かしめたりするだけでは傷むこともありません。無理な力が加わると、最悪の場合、運動するときの力に加算されて、端子部分のバイオメタルに作用することがあります。この時見かけの強度が落ち、繰り返し動作させると破断しやすくなります。
またカシメ圧のかけすぎも禁物です、ただしカシメた後にハンダごてなどでカシメ部を300℃前後まで加熱すると応力集中はかなり緩和され、通常に使えるようになります。カシメたままの端子を基板に直接ハンダ付けすれば、このような応力緩和熱処理が自動的にできます。
参考:BMXの固定法(PDF)
正しい使い方をしていると思いますが、両端を金具でカシメたBMFが伸びてたるんだみたいです。原因は何ですか?
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室温状態のBMFは丈夫でなかなか伸びません、まず金具の部分を調べてください。金具のところでBMFが滑っていませんか?
BMFは表面がなめらかで強い張力を発生するため、カシメが不十分な場合簡単に滑ってしまいますのでしっかり固定してください。ハンダで金具を止めた場合などわかりにくいですからよく見てください。
BMFを壊してしまうことを警戒しすぎて、カシメが弱く不完全になることがあります。特に太いBMFは滑りやすいようです、このようなときは、U字型に折り返した状態でカシメてください。BMFを引っかけているところがプラスチックの場合食い込むこともあります、同様に調べてください。
他の原因として過熱が考えられます、負荷状態のままたびたび過熱を繰り返すと伸びることがあります。バイオメタルは収縮動作が終わったら、通電を停止するか少なくするのが原則です。早く動かすために大きな電流を流していませんか。大きな電流を流すと過熱しやすくなります、このような場合は加速回路を使用してください。
室温でセットしマイナス20℃以下の温度で使用するとBMFが少したるみます、どうしてですか?
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室温に戻せば元に戻ります、BMFは極低温にすると負荷をかけなくとも少し伸びることがあります。
これはもともとBMFの持っている性質です、低温で使用するアクチュエータを作る場合は考慮してください。
BMFやBMXが加熱されて赤熱状態になった場合、この線材はもう使用できませんか?
赤熱した部分以外で再利用するのは無理ですか?
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適正負荷荷重の範囲であれば1~2回程度1秒以下の短時間、赤くなるくらい(400℃以上)に過熱しても動作は大きく変化しませんが、永久伸びが発生します。
BMXでは伸びが大きく完全に収縮しなくなることもあります、またこのような状態では当然性能は劣化していますので、ご承知の上でご使用してください。大切なものには使用しないでください、白変するほど赤熱した場合は使えなくなります。
BMXで引っ張り過ぎてしまった場合、このBMXは使用不可能でしょうか?
《
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動けばその範囲で使えますが、完全に縮んだ状態までは収縮しません、当然正規の性能とは異なります。
BMXは、用途によってはカールした毛のように伸ばしたままで使用されることもあります。
BMXに電流を流した後、伸張するとき無理に引っ張るとどうなりますか?
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無理に変形させると材料が壊れることがあります。切れなくとも特性が劣化し、形状が回復しにくくなることがあります、このため最大負荷荷重を設定しています。
最大負荷荷重は、動作中に加えてもバイオメタルの内部組織がほとんど変化しない最大の荷重で、動作寿命から算出された値です。
BMX150の場合は30~40gfです、BMX100の場合は18~20gfです。最大負荷荷重は、BMXの線材径の二乗に比例します。
回数が少なければ多少最大負荷加重よりも大きな力が加わっても問題ないと思いますが、常にかかるような場合は疲労が進みやすくなります。また重りをつるす際は、速く運動させると慣性による加速度で重りの荷重より大きな負荷が発生しますのでご注意ください。
BMFでも同様な注意が必要です。
バイオメタルを伸縮する時に強引に引き戻した場合、金属疲労で壊れるといっ たことはあるのでしょうか?
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動作中に無理に変形させると材料が壊れることがあります、切れなくても性能が悪くなることがあります。このため最大負荷荷重を設定しています、BMX150の場合20〜40gfです。BMF100の場合は80gfです。最大負荷荷重は、BMF、BMXの線径のほぼ二乗に比例します。
回数が少なければ最大負荷加重よりも多少大きな力が加わっても問題ありませんが、常にかかるような場合は疲労が進みやすくなります。
バイオメタルは一般的な形状記憶合金と異なり、だらだら伸びることがなく突然破断します。また重りをつるして高速で運動させると、慣性で重りの数値(gf、グラム重)より大きな負荷が発生しますので、その点も考慮してください。このような場合は、機構的に過負荷防止を考えた方がいいでしょう。
基本的にはBMXやBMFの最大収縮力、素材の強度よりずっと強いのです。拘束した状態で通電すると自身の力で自分を壊してしまうことがあります。
バイオメタルに文字などの形を覚えさせたいのですが。
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バイオメタルは伸縮方向に運動特性を特化された繊維状の人工筋肉です、任意の型を記憶させて加熱で再現させるような用途には不向きです。このような目的には、一般的な形状記憶合金の線材をご利用ください。
バイオメタルと成分的に近いTi-Ni系形状記憶合金は必要な形のまま固定拘束し、350~500℃に数秒から数十分加熱することでその形を覚えさせることができます。
バイオメタルファイバーをプーリーや丸棒でUターンさせたり、90度などに曲げて使用する場合の最小曲率半径は、線径の何倍程度まで可能でしょうか?
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回転するプーリーで90℃以上ターンさせる場合、プーリーの直径は理想的にはBMFの線材径の40倍以上必要です。例えばBMF100なら溝直径が4mmのプーリーが必要です、これは繰り返し動作させてもBMFに曲がり癖の付きにくい条件です。
しかし当社製アームロボットSA-01の関節部のようにプーリー溝面でBMFの移動やズレが少ない場合は、線材径の20倍程度でもかまいません。またターンさせる角度が浅い場合は、さらに小さくできます。
丸棒の場合も同様ですが、丸棒表面でスベリがあるような時はそこで破断することがあります。丸棒の材質として鉄やガラス入りの耐熱プラスチックを使うとBMFが切れやすくなります、金属なら黄銅をお勧めします。樹脂の場合ポリイミドが理想的ですが、過熱防止策を施してあるのなら、ポリカーボネートやポリアセタールなどを使うこともできます。ポリアセタールは、摩擦が少ないのでプーリーなどに向いています。
全くBMFの移動やズレがなく回転しないピンやネジ、細い丸棒の場合は、ハンダごての先などで曲がり癖を付けて耐久性を増します。曲がりにくい時は、瞬間的にその箇所を赤熱させて曲げることもありますが、強度や動作寿命などを十分検証してください。
BMFを鋭角に曲げて使うことはできません。無理に鋭角に曲げようとすると折れてしまいます。
例えば、はじめは断面形状が円形で通電加熱した後は、断面形状が楕円形状になり表面積が増すようなことはできませんか?
通電加熱時に熱損失が少なく、冷却時に熱交換し易い形状にできないでしょうか?
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断面形状の変形は、変形の規模から考えて難しいと思います。
機構が複雑になりますが、冷却時にラジエターようなものに接触させ、加熱時に離すようなことはできます。
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過熱しない状態ならABSやポリアセタール(POM)なども使えますが、加熱が予想される場合はベークライトやPBS、エポキシなどを使います。高価ですがポリイミドやポリイミドアミドなどなら丈夫で、高温まで耐えることが出来、耐摩耗性も高く摩擦も小さいので理想的です。テフロンも適した材料ですが、素材が少し柔らかいので力のかかるところでは食い込みなどに注意してください。
伸び縮みするBMFやBMXの表面に塗る絶縁材は、なかなか適当なものがありません。シリコンゴム(バスコークなど)を薄く表面に塗ることで何とか利用することができます、厚すぎると運動を阻害することになりますので、できるだけ薄く塗るのがコツです。金属部品に絶縁した状態で接触させたい時は、薄いポリイミドの粘着テープを接触が予想される部分に貼る方法が有効です。ポリイミドの粘着テープは、秋葉原の電材屋さんなどで入手できます。
塩ビなど一般の樹脂にファイバーが触れると変形しますか?燃えることはありますか?
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適切な条件で運動中のバイオメタルは最高でも80℃です。融点が低い塩ビの部品などに直接引っかけている場合は、熱と力が加わるため食い込むこともありますが、ポリアセタールやポリカーボネートなどは問題なく使えます。最近のプラスチックは不燃性や難燃性のものがほとんどです、よほど高温に加熱していないかぎり溶けることはあっても燃えることはないと思います。
BMXをプーリーを介してUターンして使用することは可能ですか?
《
回答を非表示にする... 》
可能です。
ただしBMXとプーリーの接触面は、加熱されにくいため収縮しにくくなります。
またスベリやすさなどにも注意してください。
バイオメタルファイバーは、曲げやねじり方向の変形に対しては、どのような特性を持つでしょうか?
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回答を非表示にする... 》
加熱すると曲がっていたBMFはまっすぐになりますが、安定な繰り返し動作ができるかは不明です。曲げ変形の場合、外側が圧縮変形、内側が引張り変形になります。
一般的な金属材料では引張り変形と圧縮変形の特性に大きな違いはないとされていますが、これはあくまで弾性変形の範囲内の話です。
BMFのような超弾性(形状記憶効果)の範囲では、引張り特性と圧縮特性については、このような関係が簡単には成り立たないと考えられます。特にBMFのように材料内部に異方性を持ったものならなおさらです、正直なところBMFの圧縮特性は引張りのような性能はでませんし、よくありません。
このような理由でBMFの曲げ運動に関するデータはありません、ねじり変形についても同様です。BMFは曲げやねじり変形での使用は想定しておりません、伸縮方向でお使いください。曲げやねじり方向に使う場合は性能はかなり劣りますが、一般的な形状記憶合金の方が使いやすいと思われます。
長さは温度の制御によりどれぐらい細かく制御できるでしょうか?
位置決め制御の用途にも 利用可能でしょうか?
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回答を非表示にする... 》
通電加熱駆動し位置センサーなどでフィードバックを行えば、非常に細かな制御が可能です。原理的には圧電素子やバイメタルなどの機能材料と同じく、原子間のズレのオーダーまで分解能を持ちます。これまでにも超小型のサーボアクチュエータなどが試作されています、しかしバイオメタルは基本的に温度で動く材料なので、風の影響を受けやすい欠点があります。
またわずかですが温度のヒステリシスがあるため、電磁型のアクチュエータなどに比較して高速応答性などが劣ります。温度(環境温度)の制御によるバイオメタルの長さ制御を行なうことは可能ですが、応答性はあまり早くありません。また負荷によってもひずみ量が変わりますので、上記のように位置センサーなどと組み合わせる事が有効です。
バイオメタルを動かすにはどのような電流を流せばいいでしょうか?
《
回答を非表示にする... 》
バイオメタルは電気抵抗Rと見なせます、動かすための電流は交流でも直流でもパルス電流でもかまいません。加熱の目安は、電流でとらえるのがわかりやすいと思います。
必要な電流は使用条件やバイオメタルの種類(太さ)によって異なります、具体的な数値はBMFやBMXの製品情報ページ、もしくは製品カタログを参考にしてください。
バイオメタルに適した通電制御にはどんなものがありますか?
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回答を非表示にする... 》
バイオメタルの駆動は抵抗体の発熱量の制御ですから、原理的には電流や電圧を変えればよいわけです。しかし発熱量は電流や電圧の2乗に比例して変化しますので、制御がかなり敏感になります。また電気エネルギーの多くを無駄な熱にしてしまい、電源や制御装置も大きなものになります。
そこでPWM(パルス幅変調方式)で制御する方法がよく使われます。
通電加熱で単にON-OFF駆動の場合で、電源をONにしたままキープできる時間はどのくらいを目安とすれば良いでしょうか?
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回答を非表示にする... 》
10万回以上の動作を期待するのであれば、適正な負荷加重と適正な運動ひずみの範囲内で、完全に形状回復が停止する前に、加熱を止めるかゆるめるのが基本です。また運動ひずみで4.5%以上の収縮が起きるような通電は避けてください、キープできる時間は通電で加熱される温度が問題です。放熱状態や気温も関係しますので、はっきりした答えはありません。
標準電流でゆっくり収縮する場合は、オーバーヒートも起きにくいため1〜2秒程度ならON状態を続けることができますが、電流が大きく急激に収縮するするときは、収縮が完了する前にしっかり加熱を止める必要があります。
過熱を繰り返すと動作寿命が低下します、BMXでは伸びが出ることもあります。標準電流で加熱する場合でも繰り返し使う場合は、できるだけ短い時間にした方がいいでしょう。負荷荷重が適正な範囲にあれば、収縮が完了する温度は70〜80℃です。急激な加熱をする場合は、室温から収縮完了温度までかかった秒数の何倍かで到達した温度を概算することができます。加熱が緩いと温度は少し高めに計算されます、10万回以上の繰り返し動作が必要な製品などの場合は、何らかの形で過熱防止を行った方がいいでしょう。大電流の加速電流をわずかな時間流した後、小電流の保持電流を流す方法でモノステーブル型のアクチュエータでも安全に加熱後位置や力の保持などができます。
バイオメタルの表面は絶縁されてますか?、もし絶縁されていないならコーティングなどはできないでしょうか?
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残念ながら現状のバイオメタルは絶縁されていません、したがって並列で使う場合などは接触しないような注意が必要です。しかし実際のところバイオメタルは低電圧で駆動されることが多いので、多少の接触では大きな問題にならないことが多いようです。
BMFにしろBMXにしろバイオメタルは変形が非常に大きいため、この動きに追従できる性能のよい絶縁体はありません。追従できても大きな変形力が必要なためバイオメタルの動作をじゃまします。
着性のよい導線用のエナメルなどもちぎれてしまいます、また絶縁体が厚くて強度がある場合はバイオメタルの動きがわるくなります。現状ではシリコンゴムを表面に薄く塗ったものが、比較的よい結果を示します。電圧が低いので相当薄くしても絶縁は保たれます、またシリコンゴムのチューブ内にシリコンオイルを塗ったBMFを入れたものは、BMFとチューブ内面が適当に滑るので比較的スムーズに動作します。
いずれの場合もコーティングや被覆をすると放熱がわるくなります、被覆の熱容量が大きいと加熱しにくくなります。このような理由でバイオメタルは、何も被覆してない状態が最も動きやすい状態です。
BMXの場合スプリング形状が大きく変化しますから、スキマに被覆材が入ると非常に動きにくくなりますので、シリコンゴムなどに全体を埋め込むことは難しいと思われます。線材と線材の間に十分スキマが空くように、BMXを伸ばした状態で線材の極表面だけにシリコンゴムを薄く塗れば絶縁は可能です。
また十分絶縁されたシリンダーの中で動かす方法は、BMX、BMFとも比較的有効です。
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回答を非表示にする... 》
カタログにもあるように基本的には高速繰り返しに向きません、電磁アクチュエータや圧電アクチュエータのような高速繰り返えし運動は難しいでしょう。大電流を流せば収縮方向のフルストローク動作をms以下の時間で完了することができますが、冷却時の速度はバイオメタルの熱容量と熱伝導率に依存します。
従って細く寸法の小さいものなら、ある程度の高速繰り返し動作ができると思います。
冷却時の応答速度は大まかにいって線材径に反比例します、また操作量を小さめにすることで、高速の繰り返し動作は可能です。
たとえば、当社のBMFの高速寿命試験は、本来なら元の長さの5%の大きさの操作量を変位センサーを使って2%程度に限定し、往復動作をさせています。
BMF100の場合空気中でも3Hz程度の繰り返し動作を得ています、圧電素子などと比べ操作量が巨大ですから、慣性による過負荷状態に注意する必要があります。
A09も御参考下さい。
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回答を非表示にする... 》
バイオメタル運動は通電時(加熱)の緊張収縮と、非通電時(冷却)の弛緩伸張二つの動作状態があります。緊張収縮は大きな電流を短時間に流すことで非常に速い動作が可能です、負荷が軽ければ、1μsec以下で動作を完了することができます。このような使い方では、質量の大きな負荷を動かすと想像以上に大きな荷重がバイオメタルに加わり、壊してしまうことがありますので注意が必要です。
また通電時間の制御を誤ると焼いてしまう恐れもあり、通電用の電気エネルギーの管理が重要です。このためには、コンデンサーなどに蓄えた電荷を放電する方法などが有効です。
A09も御参考下さい。
バイオメタルをどうしても高速で動かしたいのですがいい方法はありませんか?
水冷にしたらどうでしょうか?
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回答を非表示にする... 》
収縮速度は電流を増せば速くなります、問題は伸長速度です、空気中でも使用する運動ひずみを小さくすれば、比較的高速で往復運動することができます。
例えばBMF100の場合、全運動区間の中心付近で運動ひずみを3%位の範囲で利用すれば、20℃の自然放冷状態で3Hzくらいの周波数で往復運動は可能です。
運動ひずみを小さくすればさらに高速度で動かすこともできるでしょう。また首振りピストンのような機構を使えば、バイオメタル自身が強制空冷されるような状態にし速度を上げた例があります。
もちろんモーターファンやペルチェ素子などで強制空冷すれば速度を上げることができますが、構造が大型になったり複雑になります。
水冷は効果があります、当社でも30~100Hzの高速往復運動の実験を行ったことがあります。このとき普通の水より、車のラジエーター用のクーラント(ポリエチレングリコールやアルコールなどの混合物)を混ぜた水の方がうまくいきました。だたの水ですと動かしているうちに表面に小さな泡が付き、冷却状態が悪くなるようです。
クーラントが入るとバイオメタルと水との親和性が増します、またさび止めの効果もあります。
バイオメタルを長時間水中につけた場合、どのような結果になるか現在調査中です。
これはバイオメタルだけでなくTi-Ni系形状記憶合金全般にいえることですが、酸性の強い水中で運動させていると、水素脆化といわれる現象のため、脆くなって切れてしまう恐れがありますのでご注意ください。また水中で利用した場合、加熱駆動のために空気中より大きな電流が必要になります。
この場合でも断熱的に通電を行えば比較的少ないエネルギーで加熱ができます、具体的には短時間に大きな電流で加熱して収縮させる方法があります。
オーバーヒートしないように注意してください、また動作速度が速くなると慣性の影響が大きくなり小さな質量を動かす場合でもバイオメタルに大きな負荷が加わることになります。
過負荷に注意してください、油で冷却する方法もありますが、境界相ができやすいため水ほどの冷却効果はありません。油の温度に違いができても水ほど簡単には混ざりにくいと考えてください。
しかし水素脆化や腐食などはほとんどないでしょう、使用する油は燃えにくく粘度の低いものが良いでしょう。
より大きい力を得るためにBMFを束ねて使う場合の注意事項は?
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回答を非表示にする... 》
束にしてまとめて使うときのコツは、均一に冷却がされるようにすることです。
単純に束ねただけでは冷却が均一にいきません、不均一なたるみなどがなければ、はじめの加熱時は本数に応じた収縮力が発生します。
しかし冷却時は状況が異なります、束の中央付近にあるBMFが冷却されにくいため、周辺に比べ伸長が遅れ、力の多くがこのBMFに集中的に加わります。
一部の材料だけに無理が加わり動作寿命を損ねます、応答性もわるくなります。束ねてよった場合などはこのような傾向が強く出ます、同じ理由で太い単線のBMFでも同様な傾向が見られます。
束ねてから慣らし運転をすると協調性がよくなることもあります、油中や水中ですと状況はよくなります。
バイオメタルの表面は絶縁されておりません。束ねたり編んだりして使用する場合はご注意下さい。
下図のようにBMFを束ねずに接触しないように平行に配置してプーリーなどを介して一本の線のまま使った方が性能的に優れたものを作れます。実用的には、束ねる本数が2から3本と少ない方が均一に冷却できてうまくいくようです。
パピヨンやサイレントアームなどで使用しているように、BMF一本を中央で折り曲げてループにし、力を2倍にする方法は、実用的にも優れた性能を発揮します。
束ねた状態で端子を付けるときは、一本の線を折り返しながら同じ長さになるようにかしめると、はずれにくくなります。下図のような機構では、両端の単線を止めるだけです。
これ以上にBMFを多数本束ねないと発揮できないような力は、モーターなど他のアクチュエータを使った方がよいことが多いようです。
バイオメタルやその関連製品はどこで購入できますか?
オンラインショップで購入する場合どのくらいで納入されるでしょうか?
《
回答を非表示にする... 》
銀行振込の場合は入金確認後、代引きの場合は注文確認後、3営業日以内に発送いたします。天候状況などにより荷物の発送が遅れる場合は別途メールでご連絡いたします。
バイオメタルはアクチュエータの低コスト化が可能ということですが、サンプル価格からは想像しにくいのですが。
またBMFやBMXの太さと価格の関係はどのようになっているのでしょうか?
《
回答を非表示にする... 》
他の多くの製品がそうであるように価格は使用量(購入量)と関係があります、低コスト化は量産を前提としたものです。バイオメタルを使った製品の量産化をお考えの方は当社までご連絡ください、量販価格を提示させていただきます。サンプル価格は情報料や細分化費用、通信経費その他いろいろな要素が入った価格で、量産時のコストと直接的な関係はありません。購入量が多いお客様は、サンプル価格の数分の一になることも珍しくありません。
BMエアバルブの場合使用量はわずか2cmですから、仮にBMF100を1m¥1,000で購入すると、アクチュエータのコストは1個あたり¥20です、1m¥2,000の場合でも40円です。
バイオメタルは、コスト的にも小さなアクチュエータに向いているといえるでしょう。
端子付属と端子加工済みは何が違うのでしょうか。また自分でカシメるときのコツを教えてください。
《
回答を非表示にする... 》
端子付属と端子加工済みの違いは、BMXに端子を取り付けてあるか、御自分で取り付けるかの違いです。端子をご自分で取り付ける際は以下のことに注意してください。
カシメ部の締め付け部分や先端形状が鋭すぎると切れやすくなります。バイオメタルは柔らかそうに見えても定められた範囲以上に大きな変形や力を与えた場合、もろい材料になります。端子部にはできるだけ急激な変形(応力集中が起こる。)が加わらないようにします、ここで無理な力が加わると最悪の場合、運動するときの力に加算されて、端子部分のバイオメタルに作用することがあります。
この時見かけの強度が落ち、繰り返し動作させると破断しやすくなります、またカシメ圧のかけすぎも禁物です。
ただしカシメた後にハンダごてなどでカシメ部を300℃前後まで加熱すると、応力集中はかなり緩和され、通常に使えるようになります。カシメたままの端子を基板に直接ハンダ付けすれば、このような応力緩和熱処理が自動的にできます。
参考:BMXの固定法(PDF)
バイオメタルを使った試作品の製作を依頼したいのですが?
《
回答を非表示にする... 》
当社では、製品化を前提としない特注品や機能検証のための試作については対応しておりません。また、個別のお客様への技術指導も承っておりません。ご了承下さい。
その他製品開発については、E03、E04、E05もご参照下さい。
動作可能な上限温度が高いバイオメタルはありませんか?
《
回答を非表示にする... 》
当社ではバイオメタルの動作温度の変更には対応しておりません、ご了承下さい。負荷荷重が適正な範囲にあれば、収縮が完了する温度は70~80℃です。
バイオメタルの動作可能な上限環境温度は65℃〜70℃で負荷状態によって変わります、通常は60℃以下(BMXの場合50℃以下)を推奨いたします。
現在販売している太さよりも細いバイオメタルが欲しいのですが?(消費電流を抑えるため、あるいは反応(放熱)速度を上げるため)
《
回答を非表示にする... 》
現在のラインナップでは、BMF50、BMX50が最小になります。
なお今後の開発予定については未決定ですので、お問合せ頂いてもお答えいたしかねます、ご了承下さい。
以前はもっと太いバイオメタルを販売していましたが、現在でも取り扱っていますか?作ってもらう事は可能ですか?
《
回答を非表示にする... 》
バイオメタルはその性質上、線径が大きくなるほど性能が悪くなります。これは製造時や使用時において、バイオメタルの熱伝導率が低いため、素材の表面と中心付近とで温度差が発生するためです。
これはバイオメタル内部で応力に偏りを生じさせ、性能・寿命に悪影響を与えます。
このため当社ではBMF200、250、およびBMX200、250については廃番とさせていただきました、今後の製造予定はございません。
現在では線径150μmのもの(BMF150、BMX150)を最大としております。
BMF150を超える太さのものや、バイオメタルを多数束ねないと力が不足する場合は、スペースの点からも、他の方式のアクチュエータを検討される事をお勧めいたします。
C23もご参照下さい。
《
回答を非表示にする... 》
当社バイオメタル事業部まで直接お問い合わせ下さい、数量・お取引条件に対応した卸売り体系をご案内致します。
バイオメタルを応用した製品を開発したいと思いますが、どのような形からはじめれば良いでしょうか?
《
回答を非表示にする... 》
弊社オンラインショップにて、バイオメタル・ファイバー(BMF)やバイオメタル・ヘリックス(BMX)、評価キット、制御機器などをご購入いただけます。開発に必要な技術資料はウェブサイト上にて掲載しております。該当する資料が見つからない場合はお問い合わせフォームからご質問ください。
会社ではなく個人としてバイオメタルの応用品を製品化したいのですが、どんなサポートが受けられますか?
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大変恐縮ですが、現在、開発支援業務を停止しております。したがいまして、バイオメタル・ファイバー(BMF)やバイオメタル・ヘリックス(BMX))、評価キットなどをご購入いただき、お客様ご自身による評価・開発をお願いしております。開発に必要な技術資料はウェブサイト上にて掲載しております。該当する資料が見つからない場合はお問い合わせフォームからご質問ください。
貴社はバイオメタルでどのようなビジネスをしていますか?
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現在、当社はバイオメタルのビジネスとして、以下を行っています。
1. バイオメタル・ファイバーBMFシリーズやバイオメタル・へリックスBMXシリーズの販売
(小売り用サンプル販売、製品に応用した事業者様への大量販売)
2. オンラインショップで販売している製品の製造販売
自店でパピヨン、サイレントアームなど貴社製品を取り扱いたいのですが?
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業者様のBMF、BMX、パピヨン、サイレントアームなど当社製品の販売などに関するお問い合わせは、当社バイオメタル事業部まで直接ご連絡ください。数量がまとまれば小売りと異なった取引もできます。